
社員インタビュー
2024.12.09
焼き鳥屋も始める准教授、創業2年で3カ国展開のフードテック──データで探し、直感で選ぶ“異端児”な起業家たちが、日本の産業地図を塗り替える?
経営企画
Dishwill
特別対談
「組織のはみ出し者こそが、本当のイノベーションを起こせる」──。
データドリブンな投資判断と“異端児”への共感。一見相反するその2つの要素を武器に、HAKOBUNEは日本の産業地図を塗り替えようとしている。
従来の常識では理解しがたい多面的な展開を行う日本GXグループ。そして、植物工場での大豆生産からプラントベースフードの世界同時展開まで、食品業界の既存構造に挑むディッシュウィル。
この2社に共通するのは、既存の産業構造を根本から変えようという"型破り"な野心だ。
今回、この2社に投資するHAKOBUNEの栗島祐介氏を交えた鼎談が実現。そこで語られたのは、日本の産業構造を変えようとする“異端児”たちの、意外なまでに理にかなった野心の正体だった──。
細目 圭佑
Japan GX Group 共同代表。宮崎大学特別准教授も務め、「謎解き教科書」などの実験的な教育も展開。
中村 明生
Dishwill CEO。13年の上場企業経験を経て36歳で起業。研究開発重視のフードテック企業を率いる。
栗島 祐介
HAKOBUNE パートナー。データと直感を組み合わせた投資スタイルで、新たな市場を切り拓く。
「データで探す“異端児”、直感で見抜くイノベーター」
──HAKOBUNEが描く新しい投資の形
栗島:
今、決定的に変わったのは、スタートアップを取り巻く環境です。例えば、政治との距離。『LUUP』の電動キックボードがまさに典型例で、規制緩和とスタートアップの連携が、もはや当たり前になってきています。
大企業との協業も然り。わずか5年前なら“オープンイノベーション”という言葉自体にも違和感がありましたが、今や、誰も怪訝な顔をしないですよね?
栗島:
また、私たち投資家の目線でも、より大きな挑戦が可能になりました。少し前までは正直、数十億~数百億円規模の事業に向けた投資が多かったように感じます。でも今は違う。
アメリカのような桁違いの挑戦が、日本でも現実的な選択肢になってきたんです。
細目:
日本GXグループの前身にあたる渋谷ブレンドグリーンエナジーという会社を立ち上げて、新規事業開発の世界に、まったく異なるアプローチを持ち込んだんです。
私は敢えて出島というかたちで、大手企業の「失敗できる場所」をつくることにしたんです。数十年で何百という失敗を重ねる。そうやって大量の実験を重ねることで、確率論的に大手上場企業の経営者の方々が唸る新規事業の正解らしきものに辿り着こうとしてきたんです。

既存市場の“当たり前”に、真っ向から挑む
──型破りな戦略の裏にある緻密な計算
日本GXグループとディッシュウィルには、既存市場の「当たり前」に潜む致命的な歪みを見出し、そこに切り込もうとする共通点がある。
.webp&w=3840&q=75)
中村:
着目したのは、現代の大豆生産が抱えるジレンマです。
実は日本のODAが、ブラジルのセラード地帯の酸性土壌を改良するなどし、世界有数の大豆生産地に変えたんです。でも皮肉なことにこの開発が、アマゾンの森林破壊の原因になっている。このジレンマを解決するには、生産システムそのものを変える必要があるんです。
細目:
日本の上場企業約4000社のCO2排出量は年間約10億トン。この10年で日本国内で生み出されたカーボンクレジットはわずか約1,000万トン。脱炭素の取り組みが増えても、「そのうち埋まるだろう」と楽観視できるような一時的な需給ギャップではないんです。もっと大きなギャップが存在しており、そう簡単に解決できない構造的な深い問題があるんですよね……。

「規制緩和待ち?それって他責では?」
ルールも仕組みも、全部自分たちでつくる
細目:
規制緩和があるからうまくいく、規制緩和がないからうまくいかないとかって、確かに結果論としてはわかりやすいですが、現場の私たちにとってはそんなの他人事だと思っています。
自分ゴト化して、世の中で必要だったら規制緩和されるし、すぐにそうなるわけじゃないのならもう新たな市場のためのルール自体をつくればいい。事業ができないと他責にするのではなく、自分ゴト化して、つくってしまえばいいんです。
細目:
カーボンクレジットは金融商品ではないものの、現状、日本では棚卸資産や無形固定資産として取り扱うことができます。だから私たちは、近い将来、自らが金融会社になることすら設計図として組み込んだスタートアップをやっているわけです。
来年2025年からは個人向けカーボンクレジット取引所も展開します。本当の意味での市場の厚みをつくるには、個人の参加が不可欠なんです。

中村:
一般的な食品メーカーは、まず国内市場で実績をつくり、それから海外展開を考える。でも、それでは世界で戦えない。私たちは最初からシンガポール、UAE、アメリカと、同時多発的に市場を開拓しています。
シンガポールやアメリカでは食料自給率やプラントベースへのニーズが、日本とは全く異なる。同時多発的に進めることは不可欠だと思います。
根底にあるのは、「新しい豊かさ」の探求
細目:
今の時代、ゆたかさの定義自体を問い直す必要があります。私は、その定義を「おいしさと愛」と整理しています。
人が人らしく生きていくための、全てのエネルギーの源は“おいしさ”です。みんなのおいしさを作るためには今までの当たり前にとらわれない愛ある挑戦が連鎖したサプライチェーンを生み出すわけですね。ボクが焼き鳥屋をやる理由はここにあります。
“おいしい”が安く手に入ることって、愛なんですよね〜。
中村:
日本にはすでに身近に「おいしくて、なおかつ環境にも良い」という発想がたくさんある。この価値観こそが、世界で戦える武器になるはずなんです。
私たちは、品質や味について評価いただくことももちろん嬉しい。でも、より重要なのは、この品質を維持したまま大規模生産できる体制を構築できたことです。
栗島:
データなどを用いた戦略的な思考と、直感の融合。この2つの要素を両立できる経営者は稀有な存在です。
私たちが投資コンセプトとして“異端児”に注目する理由も、彼らが持つその特異な視座にあるのかもしれませんね。既存の枠組みの中で培った深い知見を持ちながら、その制約を超えようとする。そこから生まれる化学反応こそが、新しい産業の姿を描き出すと。
細目:
私は自分のことを「型破りだ」なんて全く思っていません。本来もっと自由に、もっとゆたかな価値を生み出せるはず。私たちは、気持ちのいい自然なかたちであり続けたいと思ってるだけなんです。

出典:FastGrow
Japan GX Groupでは、共に挑戦する仲間を募集しています。